生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

マジックシュガー

‪ケーキ屋の紙袋にいっぱい詰まったケーキを持ち歩く時、女は誰でもかわいくなれるのだ‬

汚れたハイカットがバレエシューズに代わる

柔らかな光が舞い踊るように差し込み

バス停に立つ数十分すら、片思いの人との待ち合わせのよう

ケーキを片手に持てば、世界は変わる

ふんわりとピンクの匂いがして

口角が綺麗に上がる

誰もわたしを知らないのに

わたしは今

世界でとびきり可愛い恵まれた子みたい

虹彩がキラキラと輝き

眩いばかりの宝石も

知らないだらけの事柄も

わたしに吹き付ける風も

春を纏い、そこには野薔薇が咲いている

ケーキは食べると消えてしまう魔法だから

時間が経つと溶けてしまうクリームが

泡のようなムースに甘酸っぱいベリーソースが

箱の中で魔法が解けてしまう前に

私の残りの若さをスプーンに乗せて

目一杯優雅にそして少し意地悪に

躊躇いなどない子供のように

フォークを苺に突き立てて

返しの付いた効き目の強いフォークで

甘さの控えた紅茶にミルク

そこでしかきっと生きていけないの

ケーキを買い直さなくちゃ

今度はもっと魔法の強いケーキ

私が目を覚まさないケーキ

ケーキ屋の紙袋にいっぱい詰まったケーキを持ち歩く時、女は魔法にかかっている

それはきっと一瞬

でも効き目は抜群

女は年を経て、ケーキに代わるものを見つけようとする

それは時にはボーイフレンド

時にはお化粧

時にはお洋服

時にはお人形

そうしていくつも魔法をかけて

女はひとりで夜を越える

女はひとりで街を歩く

女はひとりで息をする

フォークが静かに錆びて行く

白い箱が音もなく朽ちて行く

女はまた代わりを見つける

バラバラになった破片を掻き集め

そうして

そうして女はひとりで

女はひとりで歩くのだ