読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

蛇目 #短編小説 煌二

夕暮れの図書室で口付けた。

契約のような口付けだ。それも、初めから深い泥のような接吻。あっ、と驚いて、純情そうな顔をする女。「すいません、初めてで。痛く、なかったですか?」紳士的な気遣いも忘れない。何が初めてだ。初めてなんか、女中共や汚らしい学徒共にくれてやったわ。女が嫌いで、嫌いで嫌いで、粘膜が毒を浴びたように痺れる。この女の口内は毒の沼だ。ギトギトの油だ。ハッカ油を流し込んでやりたい。女はまだ初々しい顔をしている。なんて女だ。小汚い、気持ち悪い、吐き気がする。僕の家に帰ってはまた父上を跪かせ、僕の口内をなぞったその舌で、父上を洗脳するくせに。この接吻は僕の終末だ。何もかも終わりだ。こいつと結婚することも、こいつに従い生きる父上の傀儡になり、自分を殺すことも分かっている。だからこれは、最後の犯行だ。僕との初めてが、柔らかい口付けや檸檬の香料などではなく、一方的な蹂躙であるのは、僕からの些細な反旗だ。舌が自分の酸で溶けそう。また、女が、わらった。