生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

きっと世界は

この世で一番甘いたべものは、同胞である人間だ。その肉はたちまちにヒトの体を駆け巡っては、気が狂う程の中毒性をもたらす。人間が減るのは何も珍しいことじゃない。減り方が共食いに変わっただけだ。異常なはずの世界の中で何とか世間は普通を保とうとしている。この欲求の意のままに誰も彼も等しく食事をしてしまうのに、最期まで体裁を取り繕うとするだなんて、何ともおいしい話だ。
人が人を食べるようになってからも、学校は開かれ、機関は動いているし、電車やバスは今日も何食わぬ顔で平常運転だ。この世界は明日もこれからも真っ赤に染まっていく。
朝のホームルーム中に早食いしているA君の机の上のブロック肉は、多分二つ隣の組の女だ。彼の食欲は並外れていて、僕の元彼女も担任の先生の右腕もペロリと胃袋の中だ。元彼女の名前も女の名前もちょっと忘れちゃったから、可愛くなかったに違いない。人がこんなに美味しいならもっと早く食べればよかったって、今朝のニュースのコメンテーターが笑うのにつられていつも笑わない父が笑ってた。
通学路に飛散する死体、腐ってたかる銀蠅。鼻が曲がるような異臭に少し興奮してしまう。追い越しざまに擦られた柔らかな体、血の詰まった肢体たち。口内の大量の涎が喉を大きく鳴らした。
『なんておいしそうなんだろう』
きっと僕の隣を横切る彼女たちも同じことを思っていることだろう。僕たちの頭を占めるのは食欲と口の中をざらりと残った甘味だけ。抑えきれない興奮と耐え難い渇きを癒すべくお弁当代わりに現地調達した女は、酷く母親に似ていた。