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生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

蛇目 #短編小説 一

わたくし、生前から唯の一度も、貴方様には一切の本心を打ち明けずに生きて参りました。出逢って暫くし、お互いをすきになり、お付き合いに至り、貴方様と婚約を結び、そうして貴方様が他の女に心奪われていく様を、むざむざと見せつけられても尚、純然たる恋心を胸に、たった一人で生を全うしておりました。貴方様はそんなわたくしを、滑稽だとお笑いなさるでしょうね。自分が愛したのは、他でもないお前だけではないか、と。いいえ、違いますの。悲しいことにわたくしには、貴方様にこの手紙の内容を証明する根拠と、完成された証拠があるので御座います。まずは、既に天に召されております貴方様のお父上様のお話からしなくてはなりません。貴方様のお父上様のご職業は、この村にたった一軒しかない町医者であることは、貴方様もよく存じてらっしゃることかと思います。貴方様のお父上様は、村で起こるどのような病や怪我も親身になって治療してくださることで、村の者共からたいそう慕われておりました。かくいうわたくしも、その一人に御座います。村で産気づいたものがいれば出産にも立ち会い、村の要でいらっしゃいました。わたくしも、貴方様のお父上様によって抱き上げられた赤子で御座います。しかし、わたくしの母は、世にも不吉で忌子とされる双子を身籠っていたのです。その双子こそ、わたくし、と数奇な運命によって貴方様に愛されるもう一人の"私"なので御座います。