生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

透明なのは

電車がのろい。
ゆっくり、ゆっくりと、僕と彼との空間を食って行く。
彼はまだ僕に気づかない。
深く屈んで、本に目をつけるように読んでいる。
鉄の擦れるような痛い音がした。
電車が僕と彼を静止させる。
僕は足を踏み出した。
ホームと電車との隙間をローファーで踏み付ける。
彼から目をそらしてしまうのを惜しいというように、僕は彼を一つ残らず記憶する。
彼はまた、僕に気づかず本を閉じる。
様々な音が溢れかえり、彼との距離を遠ざける。
椅子に座るまでの一瞬間、僕は彼を逃がしはしなかった。
彼の制服が崩れる。
本が擦れ、音を立てるその一コマ、彼の目が、僕を捉えた。
空間は重く、引きずるようにのしかかるのに、鼓動だけが足早に刻まれて行く。
一呼吸する間に、彼は僕の視界から消えた。
外の景色が走り出した。
ここに彼を置いて、電車が僕を連れ去って行く。
久々に見た彼の顔は、何処か知らない人のようだった。