生的過干渉

僕の劣情、散文、君への過干渉。

短編小説

朝起きると 自分は細長い筒のようなものに入れられていた 上には蓋がしてあり出られない 体を思い切り揺らすも それはピクリとも動かず まるで重たい石でできているかのように 重圧と恐怖心を一身に煽っている 背中を何度も起き上がるように擦り付ける 背中…

ピンク

同じ大学の矢橋は入居者募集の看板を24時間365日掲げている大学前のアパートに住んでいる バスを待っていると目の前に浮かぶどピンクのソレは、目の悪い僕でもハッキリとわかるくらいデカデカと『入居者募集』をアピールしている 頭のおかしいいかがわしい施…

割とマイナス ショート

「恋とは足しても足しても満たされない、不完全な数式のようだ」貴方は僕を見てそう言いました。だとすれば僕にとってこの感情は恋なのでしょうか、故意なのですか。引くことで貴方が得れるとしたら、とっくのうちにしていますと、何度貴方と離れようとて、…

全総

「僕が一連の猟奇殺人事件の犯人である。簡単で酷く手荒いやり方だったことを詫びる。自分でもどうかと思うほど、美しくなかったことを淡い意識の奥底で後悔している。そこで僕は一つの自己責任として、遺書を遺すことにする。遺書というのは書いたことがな…

夜遊

前章殺人鬼は雨と踊る。しっとりワルツを、重ねるようなビヴラートに乗せて。僕らは知らない、雨の匂いが何で出来ているか。土と静かと、ばらばらになった血の匂い。無意識下に、僕らは気付いている。心地の良いその音にかき消される綺麗な悲鳴を。 Ⅰ 僕の殺…

目覚める

朝四時に目が覚めた 電源の切れた携帯と、知らない男が隣に横たわっていた 本当に知らない こいつが誰かも分からないし、心当たりが微塵もない 昨晩は死にそうな程の頭痛と吐き気に襲われ、フラフラと足を引きずり帰ったはずだ どこにも寄っていなければ、誰…

雲雀は漸う白く、痛、苦しくも浮く ⑴

「僕、全知全能じゃなくなっちゃった」 芦ケ谷は拍子抜けするくらいあっけなく言い放った 僕も薄々気付いてはいたが、いつも軽薄な芦ケ谷の口をそう動かせてしまうその事実が少し怖く感じる 芦ケ谷がソレを話そうとしないから、想定の域を超えなかっただけだ…

傍には早々厄、端をかしく誘う

芦ケ谷は青に飲み込まれた空白の夕方を、語ろうとはしない あれから一度たりとも僕から離れたことも無い 前まではふらりと何処かへ行っては名前を呼ばれるまで帰ってこないこともしばしばあった 今は何をしていても、芦ケ谷はぺたりと僕にくっついてれろりと…

不和には症状危虞、又懐(ゆか)しく痩躯

芦ケ谷がズブ濡れの身体を引き摺って、床を這いながら還ってきた 飲み込まれて数日経った真夜中のことだった 酷く濡れたように見えたソレは、全部何かの血液だった ズルリズルリとモップのように這いずり回っては床に跡を残していく 寝室は赤に塗れた 右脚は…

永久には偶像二拍、又愛しく遠く

同じ大学の奴らは僕を見ない 口を聞かないどころの騒ぎじゃない、まるで僕を認識していないかのように、物事を進ませていく まるで透明人間になったみたいだ 芦ケ谷を飼うまではそうだった、そう 僕は全知全能を手にした さながら禁忌の林檎にむしゃぶりつく…

帳は想像欠く、又均しく仰ぐ

「ちょっと世界を変えてみようか」 いとも簡単に芦ケ谷は言ってみせる そして本当にこいつはそれをやってのける そういう男だ、そういう男を僕は飼っているのだ 優越と自尊心をうまい具合にくすぐるこいつの全能感は、僕のことを異常に気持ちよくさせる この…

皮剥

布団の中に入って体に悪そうな光を浴びる 視界の端に、ふと自分の人差し指が見えた 爪の下の薄皮が、まるで切り取り線のように白く線が引いてある おもむろに左手で薄皮を捲る ぺりぺり ぺりぺりぺり 薄皮は一枚の皮になって剥がれていく 不思議と痛くはない…

帳は騒々しく、又等しく青く

どうやら昨晩の邂逅は まだ誰にも気付かれていないらしい 夜中まで及んだそれは この世界を根底から覆してしまうような そんな滑稽さを孕んでいた 最近時間が二秒遅れていることに気がついた やがてそれは三秒になって 今は42秒の手遅れ 針が少しずつズラさ…

現代版輝夜姫

「ピザポテト食べたい、ピザポテト買ってきて?」お布団から一切出ず、輝夜姫は求婚に来た立派な若者の一人に言い放った。「姫様、ピザポテト……ですか?」「そうよ、ピザポテト。私今とてもそれが食べたい気分なの」若者は街を駆けずり回って探したが、ピザ…

ペット

ママが犬を飼ってきたの。 よく晴れた日曜日のこと。 とっても大きくて少しうるさい。 躾のなってない犬。 ママが「これは"犬"よ」っていうから、クラスのえみちゃんとこの犬とはちょっと違うけど、可愛がることにしたの。 だけどママは犬のことをよくぶった…

運命

百合子と知り合って4ヶ月。 少し立ち止まってみると、もう言い逃れのできないくらい外堀が埋められている。 付き合ってはいない。 付き合ってはいないんだ。 第一、僕には好きな人がいる。 それは確実に百合子じゃない。 なのに毎朝のおはよう、毎晩のおやす…

蛇目 #短編小説 煌三

白無垢が嘲笑う。僕が生まれてきたのはこんな女と結婚し、父上と同じ傀儡になる為ではない。医者の息子だから、多少の実用的な結婚は仕方が無いとは思っていた。そのせいで昔からお金と女は嫌いだった。でも、もうどうでもいい。昨晩も父上と同じ血の通うこ…

きっと世界は

この世で一番甘いたべものは、同胞である人間だ。その肉はたちまちにヒトの体を駆け巡っては、気が狂う程の中毒性をもたらす。人間が減るのは何も珍しいことじゃない。減り方が共食いに変わっただけだ。異常なはずの世界の中で何とか世間は普通を保とうとし…

蛇目 #短編小説 煌一

図書室の姫君は今日も憂鬱そうである。元来、僕などが関わるべきではないほど深い闇を持つあのお嬢様は、今日も優雅に読書中だ。夕日が横顔にうっすらと映えていつにもなく悩ましげに見える。父上が毎晩誰かを抱いているのは知っている。それが、この姫君だ…

蛇目 #短編小説 六

わたくしは真っ黒い布で顔を覆い、結婚式に参列致しました。なんて素敵な計らいなんでしょう!愛した人がみすみす"私"と幸せになる様をこうして見られることが出来るなんて。美しく化粧を施された『わたし』が白銀のベールを貴方様の白い細く美しい指で捲ら…

蛇目 #短編小説 五

貴方様の使いの者が婚約を告げに来たのは、そんな満ち足りた日々の中です。その日はいつもより一層晴れやかな外套を羽織った貴方様のお父上様が珍しく昼間にいそいそと、診療所を閉じていらっしゃいました。昼なのに、夜のような空気感。わたくしは襖をぴっ…

蛇目 #短編小説 四

貴方様と出逢ったのは、陽の落ちた図書館で御座いました。屋敷に帰りたくないわたくしは本を読む為に毎日、帝国図書館に通いつめ、写本をしていたのです。窓辺に腰掛け、文字を写し、勉学に励んでいると、幾らか気も紛れましょう。時間の許す限りそこで過ご…

蛇目 #短編小説 三

忌み子であるわたくし達は、昼と夜に分けられました。昼は姉のわたくし、夜は妹の"私"。わたくしが昼間、外に出ている間は、"私"は大人たちで"遊んで"いるのです。"私"が夜に外に出ると、わたくしは平穏を取り戻した部屋で、静かに横たわります。そこは先刻…

蛇目 #短編小説 二

もう一人の"私"は、才気ある女でした。しかし、彼女はあくまでも、女だったのです。同じ顔のはずなのにどこか艶めいた色を持つ。"私"は貴方様のような素晴らしいお方と婚約する、はずでした。もし、先に生まれていたのが"私"であれば、貴方様のお父上様は迷…

蛇目 #短編小説 一

わたくし、生前から唯の一度も、貴方様には一切の本心を打ち明けずに生きて参りました。出逢って暫くし、お互いをすきになり、お付き合いに至り、貴方様と婚約を結び、そうして貴方様が他の女に心奪われていく様を、むざむざと見せつけられても尚、純然たる…

Fall in Love #短編小説

訥々と話すあの子の口元に、未だ見たこともない虫が死骸となって張り付いている。なんて名前か知りもしないが、少し乾いたその羽根が彼女の飛んだ唾で少し潤いを取り戻す。彼女はそれを、まるでオムライスのケチャップを口の端につけた子供のようにぺろりと…

touch me #短編小説

2年前の夏。僕のすきな人は何者かとバトンタッチをした。そうして今も僕の背中にへばりついている。 「オハヨウ。怖いゆめを見たの。あなたがいなくなるゆめ。」 淡々と語る彼女の皮を被ったコイツが、僕の妄想の産物だとしたら、僕は今すぐ彼女を押し倒して…